細木の占いでは今年は財政という金運が絶好調の年らしい。しかし、10年乗った愛用の自転車を、駅の駐輪場から盗まれた。よく聞けば財政の年は、大切な人との別れが生じるという年でもあるらしい。人ではないが盗まれた自転車は、私にとって色々な思い出がある、大切なものだった。彼女の占いは当たっていると、改めて彼女の書籍が売れているということに納得した。

その自転車は、先輩がアルバイトしていた地元の自転車屋で購入した。ホームセンターで購入する方が断然安かったのだが、先輩の顔を立てて、また、付き合ったばかりの彼女にいいところを見せられるかと思い、自転車専門店のその店で購入したのだ。そのお店で購入した自転車にはお店のシールが貼られ、空気入れは無料だし、パンク修理も格安で受けてもらえる。地元なので利用しやすく、長く乗ることを考えれば、そのお店で購入したことは結果的に正解だった。その自転車で後ろに彼女を乗せ色々なところへ行ったし、現在も実家で飼っている猫のアリスが捨てられているのを見つけ、段ボールのまま持ち帰ったのもその自転車でだった。

いつもより遅い時間に仕事から帰り、朝、駐輪場に自転車を停めたはずの場所へ向かうと、自分の自転車を含め、周囲の自転車はほとんどなくなっていた。見渡せばその時間帯に駐輪場に残っている自転車はわずかで、他の場所にも自分の愛車は見つけられなかった。駐輪場の係員さんも帰ってしまっている時間だし、自分の自転車がどうなったのか、これからどうしたものか、すぐには状況がのみ込めなかった。

自転車を誰かに盗まれたのだとすぐに気がつけなかったのは、私が少し大人になり過ぎていたからかもしれない。